カエル達の体温と皮膚を思いやる
2016/02/14
■栃木県那須湯本の名湯「鹿の湯」
私が単身赴任していた栃木県は温泉地として有名で、東京に戻らない休日などには愛車であるホンダモンキーにて各温泉への日帰りツーリングを楽しんでいました。
特にお気に入りだった温泉が、那須湯本温泉にある「鹿の湯」というところです。
鹿の湯は、那須湯本温泉の中でも最も古く由緒ある温泉で、特徴は湯船が6つに分かれ、それぞれの温度が異なり好みの温度の温泉を楽しめるというものです。
源泉の温度が高い温泉でもあるので一番温度の高い湯船は48度となっており、この温度の湯船は本当に入り慣れた常連さんでなければとても入れるものではありません。
■普通の人でも46度のお風呂はかなり熱い
「鹿の湯」は非常に強い温泉で、源泉の温度も高めなので、お湯の入り方としては、1分間は腰までを湯に入れた半身浴、残りの2分間は胸あるいは肩まで湯に浸かり、1クールを3分間とするのが基本です。
「鹿の湯」には何回も通った私でさえも、入れる湯船は2番目に温度の高い46度の湯船までが限度です。そして、46度であっても足の指先などはピリピリとし、自分が湯に浸かっている時に、他の人が入ってきて湯船のお湯が動くものなら、その熱さにジッと耐えるには厳しいものがあるほどです。
ましてや、一番高い48度の湯船に入るなんてもってのほかです。
「鹿の湯」に初めて入られる観光客の中には48度の湯船に挑戦しようとする人がいますが、まず常連さんに「やめておいた方がいいよ。どうしても入りたいなら、まずは足だけ入れて、自分で入れるかどうか試してみるといい。」と声をかけられます。
そして、48度の温度の熱さに驚き、湯船に入るのを諦めるのが常です。
■素手でカエル達を掴むとはどういうことか
翻って、ツノガエルに限らずカエル達のケージを掃除する時のシチュエーションを思い起こしてみてください。
ある程度成長したツノガエルであれば、噛付かれてしまう恐れがあるのでケージを掃除する時などに、素手でカエルを掴んで移動させるといったことはしないと思いますが、ツノガエルのベビーやイエアメガエルなど温厚なカエル達を素手で掴むことはないでしょうか。
通常、25度前後に保温している飼育環境では、カエルの体温は23度前後になっていることでしょう。そして人間の体温は35度半ば~36度前後です。
その温度差は大よそ13度。
これは36度の体温の人間が約50度の温泉に入るようなもので、カエルにしてみれば、その熱さにビックリしてしまう温度であることは間違いないでしょう。
さらにカエルの体表は人間の皮膚のように分厚く、丈夫なものではなく、基本的に粘膜質です。また、人間の手は皮脂はあっても、カエル達の皮膚のように潤いに満ちているものではありません。
このカエルの皮膚と人間の手との温度差と皮膚組織の違いを考えてみると、仮にちょっとした瞬間であったとしても、カエル達を素手で掴むことはご法度だと考えるべきではないでしょうか。
■あなたは50度のお風呂に入れますか?
そうはいってもカエル達を飼育していく中で、カエルを捕まえ、別なケージに移すというシチュエーションがなくなる訳でもありませんので、何らかの対処が必要になります。
具体的な対処策としては、まず素手でカエル達を触らないようにするために、観賞魚用の柔らかいネットを用い、カエル達の粘膜質の皮膚を守るためにネットを事前に水に濡らしておいて、カエル達を捕まえるといった方法が良いと思います。
また、どうしても手で掴む必要がある場合には、十分に手を水で濡らし、濡らした水分を拭き取ることなく、濡れた手のままで優しくカエル達を掴んであげるのがいいでしょう。
あなたは50度のお風呂に入れますか?
もし入れると思われる方は、那須湯本にある「鹿の湯」で48度の湯船を経験してみて下さい。「鹿の湯」の48度の湯船の熱さを経験すれば、きっとカエル達を素手のままで掴むようなことはしなくなると思いますよ。